十紀夫語録

打田十紀夫オフィシャル・ブログ

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Archive for 6月 3rd, 2010

TABサムピック物語
<第3回> 〜涙と汗のプロトタイプ〜

(…<第2回>より続き)今回は、注目のプロトタイプご紹介です。 TABサムピックの開発プロジェクトが始まってから完成品が出来上がるまでの間に、新上の曽我部さんは、実験的な数々の試作品を作りました。その中から、主だったものを一挙大公開!

★プロトタイプ1(→)
ピック部にしなりを持たせるための実験として作ったもの。弦に当たる先端部と指を入る部分を分断して、段差を付けて接着剤でくっつけてあります。確かに先端部がややしなることになるのですが、なんか弾いているうちに“ポキッ”と取れちゃいそう。。。それに、先端部がずれていると、通常のサムピックに慣れている人は、弾きにくく感じるに違いないでしょう。

(←)★プロトタイプ2
指のサイズに応じて調整できるように、初めて『ベルト』というアイディアが導入されたモデル。ただ、通常のサムピックで隙間の空いている先端部側が、閉じられて固定されているため、ピッキングした際に、まったくしならないことになります。これでは、弦に対する当たりが強くなり過ぎて、バランスのいいサウンドになりません。また、ピッキングした際の弦の圧力が、ピック全体にもろに伝わるために、指からずれてしまうことになります。ただ、隙間の空いている先端部側を閉じることで、サムピックの内側へ弦が引っ掛かることがなくなるので、このアイディアも発展させる価値ありということに。

★プロトタイプ3(→)
完成型にかなり近づいたモデル。爪側全体にベルトを渡す方式がついに導入されました。ベルトの素材を選べば、私がそれまでサムピックの裏(爪側)にゴムを張ってきたのと同様にずれにくくなるはずです。それでいて、指のサイズに応じて調整も出来ることになり、また、サムピックの内側への弦の引っ掛かりも解消され、このプロジェクトもかなり前進したなあということを実感しました。

(←)★プロトタイプ4
プロトタイプ3に改良を加えたバージョン、その1です。ピッキング時にしなりを出すために、ピック部をカッタウェイにしたモデル。親指に対する圧迫感が幾分かは少なくなったものの、今イチしなるという感覚には至りませんでした。でもここまで来ると、曽我部さんも私も開発が楽しくて仕方がないといった感じです。サムピックにとりつかれた熱いオヤジの物語も、それなりに絵になる展開になってきました。

★プロトタイプ5(→)
プロトタイプ3に改良を加えたバージョン、その2です。スリットを入れるというアイディアを導入した最初のモデル。曽我部さんが手作業で切り込みを入れたんです。さすがアイディアマンの曽我部さん! ずれない、すなわち「固定させる」という概念と、しなりがある、つまり「動く」という概念を同居させた画期的なTABサムピックの完成まで、あと一歩となりました。

(←)★プロトタイプ6
しなりが確実に感じられるまでのスリットをピック部に加え、ベルト部にもゴムを採用し、ついにほぼ完成型に辿り着いたTABサムピック。これは商品化する前の確認用のモデルで、完全透明バージョン。ピック部の素材には、滑らかさと耐久性を兼ね備えた、工業用のギアに用いるナイロン樹脂を採用することで、弦に当たる部分が常に滑らか。先端部の長さも私が指定した通りになりました。あとは、ゴムの材質を、圧迫感がなくフィット感もいい、適度の硬さと弾力のものに決め、ベルトの部分に『TAB』と『新上』のロゴ(これがまた滑り止めにもなるんです!)を入れれば完成です。そして、色のバリエーションを加えて、商品化へとレッツ・ゴー!

涙と汗の日々の中から遂に完成した、現在5色の“TABスペシャル”サムピック(→)。そんなにビッグ・ビジネスになるとは思えないサムピックですが、男達のこだわりの熱い物語があったのです。そしてなんと、TABサムピックは日米特許まで取っちゃったんですよ! 曽我部さんとは「いつの日かNHKでやっている“プロジェクトX”にいずれ出ましょうね!」と語っていたのですが、これは番組が終わってしまいましたね、残念〜。

次回は、TABサムピックを実際に使用する上で、役に立つアイディアをご紹介します。(…<最終回>へ続く)

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