十紀夫語録

打田十紀夫オフィシャル・ブログ

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Archive for 6月, 2016

ドン・ヤング氏との思い出

先日ナショナル・ギターの前社長ドン・ヤングさんが亡くなられました。その朝、尾崎クンから第一報をもらってびっくりしました。まだ63歳でしたので、ご病気でもされていたのでしょうか。数年前に社長職からも退かれていましたし。

ナショナル・ギターの歴史に少し触れてみます。元のナショナル・ギター社(正式にはNational String Instrument Corporation)は、リゾネーター・ギターを開発したジョン・ドピエラ氏が1927年に兄弟で設立した会社です。その独特の音色と大きな音で、1920~30年代にカントリー・ブルースやハワイアン、アーリー・ジャズの分野で多くのギタリストに愛用されました。戦前ブルースマンが写真で抱えているリゾネーター・ギターはたいていナショナルです。ただ、そのナショナル社から設立者のドピエラ兄弟が独立してドブロ社を設立(“ドブロ”は“Dopyera Brothers”からのネーミング)したり、はるかに大音量を出せるエレキ・ギターが登場したりで、1942年に倒産してしまいました。

ドブロも素晴らしいリゾネーター・ギターで、その後ブルーグラスでは欠かせない楽器となりましたが、ナショナルとはサウンドが異なるため、ブルースマンの多くはヴィンテージのナショナルを使うしかありませんでした。それを復活させたのがドンさんでした。1989年にマクレガー・ゲインズ氏と設立したナショナル社(正式にはNational Reso-Phonic Guitars)のおかげで、今日クオリティの高いナショナル・ギターを新品として手にすることができるようになったのです。

私がドンさんと最初にお会いしたのは、2009年に故ボブ・ブロズマンさんを招いてのツアーにご一緒に来日されたときでした。下の左は、スターパインズ・カフェでのライヴ終了後の写真です。とても盛り上がったライヴで、ドンさんも楽しんでくれました。下の右写真は、その翌年奥様のヒラリーさんと来日されたときのもの。当時行きつけの幡ヶ谷「くつろぎや」へ、ナショナル・ユーザーの保科夫妻と一緒に行ったときの写真です。海外の方には敬遠されがちな「鳥刺し」を美味しいと召し上がってくれたのが印象的でした。

私が現在使っているナショナル・ギターは、1930年代のヴィンテージものなのですが、もっと活用できるように「こういうナショナル・ギターを作ってもらえると嬉しいのですが…」とドンさんに色んなお話をさせてもらいました。ドンさんは私の要望に前向きに応えてくれると言ってくれて、その後NAMMショーでお会いした際にも「あの件、忘れてないからね。実は色々やってるんだ。モデル名は何か分かるか? “Giant Baba”だよ(笑)」とまで言ってくれたんです。左写真はそのときのものです。その後、ナショナル・ギターの顔でもあったボブ・ブロズマンが亡くなったりしたこともあって、残念ながらギターの完成は実現しませんでした。でも、ドンさんとの楽しかった思い出は心にずっと残っています。どうか安らかに。

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