Archive for 11月 30th, 2011
“オール・ナトー”ギター
たまにはギターのことも書いてみましょう。でないと、ラーメン研究家と思われてしまいそうで(笑)。
私は、皆さんに負けず劣らず(?)、たくさんギターを持っています(30本くらいかな)。ライヴや録音で使っている主なギターは、私のHPにある「Tokio’s Gear」(→ここ)に紹介してあります。これまでに泣く泣く手放したギターも数多いのですが、それらを含めてどのギターも“いいギター”ばかりです。アコースティック・ギターという楽器は、人間と同じでそれぞれが独特の個性を持っていますので、やはり必然的に色々欲しくなってしまいます。まあ、気が多いと言えなくもありませんが(笑)。
そんな愛用ギター達を、たまにこのページでご紹介していくとしましょう。まず今回は、このギター(→)。クレセントムーン”All-Nato”です! クレセントムーン・ギターは、愛知県日進市にある「トーンウッド」という工房で、日比伸也さんが作っているギター。私は、この”All-Nato”の他にも、“All-Spruce”と“OOO-Rosewood”を所有していて、どれも素晴らしいギターです。この日比さんという方は、ユニークな発想を持ったギター製作家で、普通使わないような材でもギターにしてしまうんです。この”All-Nato”もそんなひとつで、その名のごとく、サイド、バック、トップにすべてナトーという材を使っているんです。
日比さんがこのギターを作った発想はこうです。
「昔のブルースマンの時代に、今あるような高級手工ギターで演奏するプレイヤーなどいなかった。材もそんないい材で作られたギターではないはず。結果、ギター自体は最初は鳴らないかも知れない。それでも、ブルースマンが弾き込むうちに、ヤズー・レコードで聴かれるような、渋く味わい深いブルースの音になったんでしょう。そんなギターを作ったんです」
このナトーという材は、確かに低価格のギターでしか使われていない材ですが、日比さんの手によって、レトロな雰囲気を感じさせるギターに仕上がっています。ルックスが印象的ってこともあって、私もプロフィール写真で使ったりしています。また、最近復刊したの私のCD付き教則本「ラグタイム・ギター(改訂版)」(リットーミュージック)の表紙にも採用されました(→)。
そして肝心の音ですが、一般のギターの鳴り方とは違い、古き良き時代の音というか、とにかく不思議なサウンドの印象です。そして弾き込んでいくうちに、まさに日比さんの言ったとおりに、戦前カントリー・ブルースやアーリー・ジャズを弾くと非常に“いい感じ”に育ってきました。特に、ブラインド・ブレイクの超絶ワザ「スタンブリング・ベース」を弾くと、とても気持ちよく弾けるんです。これは、“ベース音がよく出る&サスティーンが長い”といった点に重点を置く一般的な高級ギターでは、絶対出せないサウンドです。そういった一般のギター・メーカーや製作家と異なる発想を持った日比さんだからこそ、このようなギターが作れたんでしょう。ベースが鳴りすぎたり、サスティーンが長すぎたりすると、高級感を感じさせることができても、実際の演奏ではコントロールしにくいものです。
最後に、この”All-Nato”ギターで弾いたライヴ映像を挙げておきましょう。今年の5月にトーンウッドのNewギャラリーでライヴを行ったときのものです。モノトニック・ベースで弾くビッグ・ビル・ブルーンジーの「Pig Meat Strut」を弾いています。
You are currently browsing the 十紀夫語録 blog archives for the day 水曜日, 11月 30th, 2011.