十紀夫語録

打田十紀夫オフィシャル・ブログ

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“オール・ナトー”ギター

たまにはギターのことも書いてみましょう。でないと、ラーメン研究家と思われてしまいそうで(笑)。

私は、皆さんに負けず劣らず(?)、たくさんギターを持っています(30本くらいかな)。ライヴや録音で使っている主なギターは、私のHPにある「Tokio’s Gear」(→ここ)に紹介してあります。これまでに泣く泣く手放したギターも数多いのですが、それらを含めてどのギターも“いいギター”ばかりです。アコースティック・ギターという楽器は、人間と同じでそれぞれが独特の個性を持っていますので、やはり必然的に色々欲しくなってしまいます。まあ、気が多いと言えなくもありませんが(笑)。

そんな愛用ギター達を、たまにこのページでご紹介していくとしましょう。まず今回は、このギター(→)。クレセントムーン”All-Nato”です! クレセントムーン・ギターは、愛知県日進市にある「トーンウッド」という工房で、日比伸也さんが作っているギター。私は、この”All-Nato”の他にも、“All-Spruce”と“OOO-Rosewood”を所有していて、どれも素晴らしいギターです。この日比さんという方は、ユニークな発想を持ったギター製作家で、普通使わないような材でもギターにしてしまうんです。この”All-Nato”もそんなひとつで、その名のごとく、サイド、バック、トップにすべてナトーという材を使っているんです。

日比さんがこのギターを作った発想はこうです。
「昔のブルースマンの時代に、今あるような高級手工ギターで演奏するプレイヤーなどいなかった。材もそんないい材で作られたギターではないはず。結果、ギター自体は最初は鳴らないかも知れない。それでも、ブルースマンが弾き込むうちに、ヤズー・レコードで聴かれるような、渋く味わい深いブルースの音になったんでしょう。そんなギターを作ったんです」

このナトーという材は、確かに低価格のギターでしか使われていない材ですが、日比さんの手によって、レトロな雰囲気を感じさせるギターに仕上がっています。ルックスが印象的ってこともあって、私もプロフィール写真で使ったりしています。また、最近復刊したの私のCD付き教則本「ラグタイム・ギター(改訂版)」(リットーミュージック)の表紙にも採用されました(→)。

そして肝心の音ですが、一般のギターの鳴り方とは違い、古き良き時代の音というか、とにかく不思議なサウンドの印象です。そして弾き込んでいくうちに、まさに日比さんの言ったとおりに、戦前カントリー・ブルースやアーリー・ジャズを弾くと非常に“いい感じ”に育ってきました。特に、ブラインド・ブレイクの超絶ワザ「スタンブリング・ベース」を弾くと、とても気持ちよく弾けるんです。これは、“ベース音がよく出る&サスティーンが長い”といった点に重点を置く一般的な高級ギターでは、絶対出せないサウンドです。そういった一般のギター・メーカーや製作家と異なる発想を持った日比さんだからこそ、このようなギターが作れたんでしょう。ベースが鳴りすぎたり、サスティーンが長すぎたりすると、高級感を感じさせることができても、実際の演奏ではコントロールしにくいものです。

最後に、この”All-Nato”ギターで弾いたライヴ映像を挙げておきましょう。今年の5月にトーンウッドのNewギャラリーでライヴを行ったときのものです。モノトニック・ベースで弾くビッグ・ビル・ブルーンジーの「Pig Meat Strut」を弾いています。

5 Responses to ““オール・ナトー”ギター”

  1. 12月 8th, 2011 at 1:53 PM

    名古屋のK賀 says:

    お久しぶりです。
    私もト-ンウッドでこのギタ-を拝見しました。不思議な外見と音でした^^ 一番前で聴けて(見れて)光栄でした。
    確かに戦前戦後のブル-スマンはそれほど高級な材木はなかったはず。でもそれなりにワザもあって弾き込む程に不思議とブル-スって感じが伝わるんですね~
     名古屋には、味噌煮込み、手羽先ですが、ある地域では名古屋市内では土地代が高くそこにお店が集まり、激戦区の所もあるようです(笑) 
     私も「SAKURA」のCDと楽譜をゲットしました。こつこつがんばります。
     打田さんもお体に気をつけて、益々のご活躍をお祈りしています。

  2. 12月 8th, 2011 at 10:42 PM

    打田十紀夫 says:

    >名古屋のK賀さん
    いつもありがとうございます!
    味噌煮込み、手羽先、カレーうどん…名古屋いいところですねえ。
    ギターは、マイペースで気長に続けるのが一番です。
    K賀さんのギターをじっくり聴かせてもらえる日を楽しみにしています!

  3. 9月 5th, 2012 at 9:20 PM

    メルボルンのI says:

    十紀夫さん、こんにちは。
    クレセントムーンのギターの音、この動画で初めて聞きました。神秘的な印象に残る音ですね。早速トーンウッドさんのサイトを見て興味を持ちました。
    日本には数多くの製作家の方が居られますが、その方のサイトを見る限りでは他とどう違うのかどこが良いのか全く分かりません。十紀夫さん自身が気に入って選んだ物を率直にこの様に紹介して頂けると大変ありがたいです。
    プロになるとスポンサーから提供されたりもあるかと思います。ショップ主催のセミナーなどではある程度仕方ないかと思いますが、せめてブログでは本音をお願いします。

  4. 9月 6th, 2012 at 12:07 AM

    打田十紀夫 says:

    >メルボルンのIさん

    コメント、ありがとうございます。
    こちらはまだまだ暑い日が続いていますが、
    そちらは寒いのでしょうね。不思議な感覚です。

    そうですね、たくさんの製作家の方のギターの違いは
    ホームページやカタログを見ただけでは、違いが分かりませんよね。
    展示会などは、多くのギターをまとめていろいろ見られるので
    いい機会ですが、それでもそのギターの本当の特性を
    把握するまでの試奏というのは、難しいかも知れません。

    その点、気に入って使っている人の感想は、説得力ありますよね。
    気に入っているわけですから、ウソはありませんからね。
    また機会があれば、私の愛用しているギターなど、色々ご紹介します。
    もちろん本音で(笑)。

  5. 9月 6th, 2012 at 10:14 AM

    メルボルンのI says:

    十紀夫さん
    素早いご返事ありがとうございます。こちらは春が近づいてきていると言う感じです。オーストラリアの中でもメルボルンの季節は正反対ではあるものの比較的日本に近いと思います。

    Laibmanさんの幡ヶ谷でのライブの時、オフィスが火事になった時のエピソードを話されていましたね。たくさんあるギターの中でどれを持って逃げるかで一番大切にしているギターがわかると(笑)、、。どれも甲乙付けがたいですよね。
    またブログを読ませて頂いてコメント送ります。

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