TABサムピック物語
<第2回> 〜理想のサムピック〜
(…<第1回>より続き)新上の曽我部さんの情熱で、“理想のサムピック”開発にむけてのプロジェクトがついに発進! 2003年半ば頃のことでした。「私が納得してライヴやレコーディングで愛用できるものを作りましょう」と言ってもらった以上、私も半端な気持ちじゃ臨めません。理想のサムピックの条件として、私が曽我部さんに提唱したのは、次の(1)〜(3)でした。
(1) 演奏中にずれにくい。
サムピックがずれそうになると、演奏に集中できなくなります。<第1回>でも触れましたが、私は昔からサムピックの裏にゴムを貼るなどして、滑り防止にかなり気を使ってきました。
(2) 弦に対して適度のしなりがある。
この“しなり”によって、サムピックでピッキングした音色にブライト感が出て、抜けのいい音になります。しなりのないサムピックは、弦に対する当たりが強くなり過ぎて、必要以上に強調された異質の音色になってしまいます。
(3) 弦に当たる部分は、常に滑りがよく滑らか。
弾いているうちに削れてきて、弦に当たる部分がザラザラしてくるようなサムピックは、ピッキング時に余計な引っかかりを感じて弾き心地もよくないし、難易度の高い曲を弾く際にミスをする要因となります。
曽我部さんも、ご自分がサムピックを使ってきた経験から、次の条件を望んでおられました。
(4) 指が痛くならない。
うん、確かにそれも必要ですね。サムピックをはめているときのフィット感が心地よければ、演奏にも気持ちが入りますからね。ただ、私が望んだ(1)を満たすためには、ガチッと強くサムピックをはめる必要があり、そうすると当然指が痛くなって(4)を満たせなくなります。それに、ガチッと指にはめたサムピックでは、(2)の弦に対するしなりを望むのも難しくなります。相反する要望を同時に満たさなければならない…、理想のサムピック開発はやはり大変な作業になってきました。
でも、アイディアマンの曽我部さんは、これらの要求をすべてクリアすべく、いろんなタイプの試作品を製作。きっとかなりお金と手間が掛かったと思います。私もこのプロジェクトが発進した以上は妥協したくなかったので、容赦なく「これじゃあ全然ダメですねえ。もっとこうなりませんか?」「ここのアイディアはいいけど、このくらいのレベルだと他にもっといいものがありますよ」などと何度もダメ出しをしたものです。サムピックに掛ける熱い青春…というには私も曽我部さんもオジサンですが、納得の行くサムピックを開発しようという情熱が、ふたりをがむしゃらに走らせたのでした。
次回はいよいよ、完成に至るまでのプロトタイプを、写真入りでいくつかご紹介しましょう。本邦初公開です! どうぞお楽しみに!(…<第3回>へ続く)
This entry was posted on 月曜日, 5月 31st, 2010 at 11:45 PM and is filed under 作品・商品・道具のご紹介. You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0 feed. You can skip to the end and leave a response. Pinging is currently not allowed.
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