十紀夫語録

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スタンブリング・ベース

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私がギターを始めたのは、19才の時でした。大学に入った春、すぐに5月病になった私は、“流し”になろう!とギターを始めたのでした(笑)。飲み屋街などでギターを抱えてお店を回り「お客さん、一曲いかがですか?!」と歌を披露するあの“流し”です。今はもう見かけなくなりましたねえ。おっと、私が演歌歌手志望だったことは封印した過去でした(笑)。ま、そんな中、なにげに買ったギターの本に載っていたステファン・グロスマンの影響で、いつのまにかフィンガーピッキング、カントリー・ブルースの世界にどっぷりになった訳です。当時(1970年代後半)はビデオもなく、LPなどは海外のレコード会社から取り寄せたりし、来る日も来る日もレコードから耳でコピーしてました。懐かしいなあ。

そんな中で私がハマったギタリストのひとりが、1920〜30年代に活躍したブルースマン、ブラインド・ブレイクでした。彼のラグタイム・ブルースのグルーヴ感たるや半端じゃなく、何度聴いても惚れ惚れします。そのサウンドの秘密のひとつが、“バドン・バドン”と小気味よく決める彼の“スタンブリン グ・ベース”。二十代前半の多感な時期に、四畳半のアパートに籠もって、来る日も来る日もブレイクのサウンドに近づけるように、練習に明け暮れたもんです(う、けっこう暗い青春かも…)

先日(5/8)島村楽器奈良店で開催されたスタジオ内「ライヴ&トーク」の開演前に、いつも応援してくれている大阪の nogunoguしんちゃんのリクエストで、そのスタンブリング・ベースをゆっくり披露した映像をYouTubeに上げました(↓)。彼はいま頑張って練習しているとのことですが、ちょっとは参考になったでしょうか。

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「スタンブリング・ベース」というネーミングは、私の師匠のステファ ン・グロスマンが付けたものです。親指が隣の弦につまずくような感じから、名付けたのでしょう(Stumble=つまずく)。ステファンの弟子である私は、そのネーミングを昔からギター雑誌や教則本で使ってきましたから、国内では結構その名前が定着したと思います。ちなみに、ウッディ・マンは「ドラッギング・ベース」(drag=引きずる)、ボブ・ブロズマンは「ダブル・ベース」と呼んでいます。なるほど、それぞれ説得力のあるネーミングですね。ブラインド・ブレイク本人は、決して名前など付けていなかったでしょうし、体から湧き出るがごとく自然と身に付けたテクニックだったに違いありません。

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